NOëL NOT DiGITAL (以下 NOëL )の世界観を発売当時の近未来像とみなして答え合わせをします。
NOëL の発売日は1996年7月26日です。
NOëL のゲーム内にはカレンダー機能がありませんが、3人との会話から、発売当時の1996年と同一であることが推測できます。このことから、2000年以降で、1996年とカレンダーの9月以降の並びが同一である年は2002年と2013年なので、2013年であろうと推測されていました。当時のパイオニアLDC の回答は「2010年前後で正確には決まっていません」でした※。しかし、その後、パラレルストーリーではありますが、 NOëL3 で正式に 2013年ということになりました。
※ PlayStation Magazine, 1996 No.19 (1996/10/11号), P.117
NOëL の世界では10月10日が体育の日です。体育の日は、1999年までは10月10日、2000年以降はハッピーマンデー制度により10月の第2月曜日になりました。このため、2013年は10月14日が体育の日でした。
NOëL ではネットワークエージェントでMY SCHOOL NOTEBOOK EMI 1のような個人情報を検索できてしまいます。現実世界では、2003年に個人情報の保護に関する法律が施行されました。これにより、一般的にインターネット上で検索できるところに生徒の名簿が置かれることはなくなりました。
余談ですが、続編の NOëL3 では、この現実に即してか、ハッキングして個人情報を得るというゲームになりました。
恵壬の「壬」という字は人名用に2004年に使えるようになったので、1996年生まれの恵壬には本来、使えない字でした。NOëL 発売時の1996年には簡単に調べる方法もなく、「壬」は、それほど難しい字でもないため、人名に使えると考えて調べもせずに名付けたのでしょう。
由香がエンディングで205系の山手線に乗っていますが、山手線で205系が運行されたのは1985年から2005年までなので、実際には2013年に乗ることはできませんでした。2013年に山手線で走行していた車両はE231系です。とは言え、E231系は2002年に走行開始したので、NOëL 発売時の1996年にはこの車両を予測するのは困難でした。
由香がエンディングでボタン式券売機で切符を購入していますが、 Suica が2001年からJR東日本管内のエリアで順次導入されました。また、2007年からは PASMO が関東地方の私鉄などで導入されました。それらに合わせて券売機もタッチパネルのものに置き換えられました。
その Suica・PASMO ですが、2013年5月末現在で発行枚数は約6616万枚でした。2015年の国勢調査によると関東地方1都6県の人口は約4300万人です。 Suica の範囲には仙台都市圏や新潟都市圏などを含んでいることを差し引いても、関東地方在住の人が1人1枚以上 Suica または PASMO を持っていることになります。
この発行枚数と由香の性格からすると、交通系ICを持っていないはずがないです。
とは言え、Suica 誕生までの軌跡によると、 Suica の原型のフィールドテストが1994年、1995年、1997年に行われたようですが、もし、この内容を NOëL 発売(1996年)当時知っていたとしても、定期券を必要としない人にまで交通系ICカードが普及することを想像することは困難であり、この描写も妥当なものでした。
由香の部屋の上部から透過ディスプレイのようなものが吊り下がっています。
透過ディスプレイは2011年には量産化されていて、実際に透過ディスプレイ搭載の携帯電話も発売されました。当のパイオニアも2011年に自動車のフロントガラスにナビゲーションなどを投影する「透過ディスプレイ」を開発していました。
ところで、部屋には、非透過型ディスプレイも見えます。
これらのことから、2013年には、透過型ディスプレイは登場しているが、非透過型ディスプレイも使っているという予想とみなすと、なかなかの予想精度だったと言えるのではないでしょうか?
ノエルコンプリートプレイヤーズバイブルの P.88 によると、日本選手権の場所は代々木の国立競技場です。
実際の2013年の日本選手権は味の素スタジアム(東京都調布市)で開催されました。
NOëL の解説書2ページ目に舞台設定が以下のように書かれています。
ネットワークがごく当たり前に家庭に浸透した、ちょっとだけ未来の日本。
とあります。
ここでインターネット普及率を見てみましょう。
総務省の情報通信統計データベースによるとインターネットの世帯普及率は1996年(平成8年)に3.3%であったものが、2013年(平成25年)には84.9%になった。
ただし、上記の表は1997年から開始しているため、1996年の世帯普及率は平成13年版 情報通信白書の我が国におけるインターネットの普及状況の数値を利用しました。
ちなみに、ここでのインターネットの世帯普及率は以下のように定義されています。
世帯の平成17年まで及び平成19年から平成30年までは、家族の誰かが過去1年間にインターネットを利用したかどうか(利用機器、場所、目的を問わない)についての設問に対して「利用した」旨回答した世帯の割合。
インターネットの世帯普及率が3.3%の年に発売されたゲームであることを考えると、なかなかの予想精度と言えるのではないでしょうか?
いくつかのアプリケーションで、2010年代までにビデオ通話が一般的に可能になりました。以下は一例です。
西暦 | アプリ |
---|---|
2006年01月05日 | Skype |
2010年09月08日 | FaceTime |
2013年09月24日 | Line |
由香の話によると、携帯電話を、代歩と由香は所有していて、恵壬は所有していないです。内閣府の調査によると、2013年の高校生の携帯電話の所有率は 96.4% でした。
西暦 | 回線数 |
---|---|
1996年01月 | 8,443,800 |
1996年07月 | 13,419,200 |
1997年01月 | 18,936,000 |
2013年09月 | 134,884,800 |
ここで、携帯電話の普及台数を見てみましょう。電気通信事業者協会によると、携帯電話の契約数は NOëL の発売時の1996年07月で1362万回線でした。 NOëL の開始時の2013年09月で1億3488万回線でした。
ただし、1996年1月で844万回線だったものが1年後の1997年1月で1817万回線になるような最中に NOëL が開発されていたことを考えると、代歩と由香が携帯電話を所有していて、恵壬が携帯電話を所有していないという設定は、なかなかの予想だったのではないでしょうか。
由香との11/16の会話で、屋外からノートパソコンでビジュアルフォンの通信をしています。特にこちらは携帯電話にかける操作をしていないので、おそらく由香が着信をノートパソコンに転送設定していたのでしょう。
屋外でのノートパソコンのインターネットへの接続方法ですが、有線を室外まで伸ばしたと考えるより無線で通信していると考えるのが自然でしょう。その無線の方式ですが、Wi-Fi の標準化は1999年なので、1996年発売の本作では Wi-Fi を意図していたとも考えづらいです。ここでは携帯電話のテザリング(ノートパソコンと有線接続の携帯電話をモデムとして利用)を意図していたと解釈します。
ここで現実の通信速度を見てみましょう。日本の携帯電話の通信速度は、1996年には 9.6kbps 程度であったものが、2013年には150Mbps になっていました。
3G の通信速度でも最低限のテレビ電話は可能であり、2001年にはテレビ電話機能搭載の携帯電話 FOMA P2101V が発売されました。また、 4G の通信速度であれば 1080P でテレビ電話も可能です。
世代 | 開始年 | 終了年 | 通信速度 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1G | 1985 | 1999 | - | アナログ mova |
2G | 1993 | 2012 | 9.6kbps | デジタル mova |
3G | 2001 | 2026 | 384kbps | FOMA |
4G | 2010 | - | 75Mbps | Xi, LTE |
5G | 2020 | - | 4.1Gbps |
ところで、11/16は、ギリシャの由香との会話ですので、ギリシャの回線事情を見てみましょう。
ギリシャ最大シェア Mobile Network Operator (MNO) の Cosmote が2011年9月には 3G でギリシャの人口の98%以上をカバーしていました。また、2012年11月には、ギリシャ最大の都市アテネ (Athens) と第2の都市テッサロニキ (Thessaloniki) で、商用LTE (4G) サービスを開始しました。2013年11月にミコノス島(Mykonos) で 4G ネットワークを使えたかどうかは不明ですが、 3G では通信できていたはずなので、一応、テレビ電話可能であったと思われます。
解説書の2ページ目には以下のように臨海区が説明されています。
東京湾の埋め立て地には新たに「臨海区」と呼ばれる実験モデルとしが作られています。
東京臨海副都心は、いわゆるお台場を指します。
残念ながら、現実の2020年までに、お台場が区として独立するという話はありませんでしたが、海を隔ててお台場に隣接する中央防波堤埋立地を20.7%が大田区、79.3%が江東区とする判決を東京地裁が言い渡した裁判(2019年)はありました。
NOëL の世界の臨海区には臨海ライナーが6路線ほど運行されているようですが、現実のお台場には「ゆりかもめ」と「りんかい線」の2本の路線が運行されています。
鉄道に関しては新設に時間がかかるため、路線の新設が計画倒れになることはあっても、予定のないところから短時間で新路線が現れることはないため、20年程度の未来のことは、ある程度予測できますが、東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(2016年)によると、検討熟度が低い常磐新線(つくばエクスプレス)の臨海部延伸の話と、お台場部分はりんかい線を再利用する羽田空港アクセス線や東海道貨物支線貨客併用が存在する程度です。つまり、臨海ライナーに関しては、調査などは全くせずに描いたものでしょう。
西暦 | 出来事 |
---|---|
1995 | ゆりかもめ開業 |
1996 | りんかい線開業 |
2002 | りんかい線が埼京線と直通運転開始 |
2006 | ゆりかもめが豊洲まで延伸 |
自動追尾型撮影システム (Personal Auto Navigator Camera System) 、通称「思い出君」は、ドローンと言えるのではないでしょうか?
そのドローンですが、2015年にドローンを規制する航空法の一部を改正する法律案が可決されました。これにより 200g以上のドローンは人口密集地(東京都区全域含む)で許可を得ずに飛ばすと罰せられるようになりましたが、 NOëL は2013年なのでセーフです。
解説書32ページ目に以下のように書いてあります。
「NOëL」の時代設定は未来になっており、現在の法律では、未成年の飲酒は禁じられています。
成年年齢を20歳から18歳に引き下げる法律が2018年に成立、2022年4月1日から施行されます。しかし、民法の成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒やたばこに関する年齢制限については、20歳のまま維持されますので、あしからず。「お酒が飲めて」は代歩の勘違いでしたが、勘違いしてもおかしくない法改正でした。